『魔法少女リリカルなのは外伝・仮面ライダーXs』




IF&番外編その1の1  『特別教官Xs!〜初日〜』

レリック事件が本格化する少し前、機動六課訓練エリア。
それを離れたところから眺めている影が二つ……

「どうだ?」

「まだまだ未熟、連携も甘い、だが……」

「だが?」

「先が楽しみではあるな」

「では、引き受けてもらえるか?」

「ああ、ただし相当ハードになると思うぞ」

「フッ、それは望むところだ。あいつらは叩けばそれだけ伸びる」

「なるほどな」

二人はお互いに小さく笑いあった。


「はいみんな集まって〜!」

訓練が一区切りついたところでなのはがフォワードの面々を集める。

「実はこれからしばらく出張しなきゃならなくなっちゃったの」

「え?それじゃその間の訓練はフェイト隊長や副隊長たちが?」

なのはの言葉にスバルがすばやく反応する。

「いいえ、特別教官としてある人を呼んであります」

「特別教官?」

「誰なんでしょう?」

「でも高町教導官より強いって事は無いだろうし……」

「ちなみに私やフェイト隊長の接近戦の師匠でもあります」

「えっ!?」

ティアナの言葉に軽く返したなのはの言葉を聞き驚く4人。

「なのはさんより強いって、いったい誰?」

「もう来てるわよ」

「え?」

なのはの声と同時に4人の背後からすっと男性が一人現れた。

「い、いつの間に!?」

「気配を感じなかった!?」

驚いて目を見開いている4人を尻目になのはの横に並び振り返る男性。
年の頃は30前後といったところだろうか?若々しくもあるが貫禄もある美男子と呼んで差し支えない男がそこに居た。

(おお、かっこいい)

「時空管理局陸戦特務武装連隊隊長、高町恭也陸将だ。
 暫しの間なのはに代わりお前たちの訓練を担当する。よろしく頼む」

「ええっ!?り、陸戦特務武装連隊ってあの!?」

『陸戦特務武装連隊』とは!
適正が無ければ扱えない特殊な戦闘用デバイス『フルアーマーデバイス』の所持者のみで構成された特殊部隊である。
月村忍博士によって修復、完成されたフルアーマーデバイス『ガディン』の解析が進み、
フルアーマーデバイスの量産が可能にはなったものの、一定の以上の能力値に加え特殊な魔力波形を持つ者にしか扱えない代物だった。
そこで全世界から適正を持つ者を集め、人格、能力、戦術などの厳しい試験をクリアした者のみにデバイスを与え、
オリジナルデバイスの所持者でもある高町恭也を隊長とし、3年前に超攻撃的特殊部隊が結成された。
技術鍛錬とその流布が目的の教導隊とは違い、完全に戦闘のみを目的に作られている部隊。
単体での飛行ができないというフルアーマーデバイスの特性上陸戦に分類されるが、
豊富なオプショナルツールと隊員の能力の高さも相まって空戦部隊を凌駕する戦力を持つ。
時空管理局における正真正銘最後の切り札、史上最強の攻撃部隊、それが『陸戦特務武装連隊』なのだ!

「それに高町ってまさか!?」

「そ、私のおにいちゃんだよ」

「なのは、いいかげんおにいちゃんって呼び方止めないか?」

「え〜、なんで〜?」

「俺もおにいちゃんって歳じないだろ」

「そんなことないよ〜、いくつになってもおにいちゃんは私のおにいちゃんだよ」

「むぅ……」

驚いてどうしようか混乱している4人を尻目にいちゃつく(?)二人。

「あ、あの〜」

「ああ、ごめんごめん。とりあえず、今日からしばらく高町……っとこれじゃ紛らわしいか、
 恭也陸将がみんなの訓練の監督を務めてくれます。みんな恭也陸将の言う事聞いてしっかりやるんだよ」

「そんな遠足とかじゃないんですから……」

久々に兄に会ったせいかテンションの高いなのはを見て頭を抱えるティアナ。

「それじゃよろしくね、おにいちゃん」

「ああ、まぁ初日だし軽くやるさ」

〔軽くかぁ、休みにしてサボったらいけないからって感じかな?〕

〔そうね、高町隊長よりキツい訓練なんてそうそう無いしね〕

「おにいちゃんのシゴキは私の3倍はキツいからがんばってね〜」

「「「「え゙?」」」」

にこにこと手を振りながら去っていくなのはの言葉を聞き固まる4人。
しばしの沈黙の後、さび付いてるかのようにぎこちなく振り向くとそこには優しそうで優しくない視線を向ける男が一人。

「まずは軽くランニングといこうか」

「ランニング……ですか?」

いち早く硬直から復帰したエリオが話しかける。

「ああ、何事も基礎体力は大事だからな」

そう言いつつ恭也が手元のコンソールを操作するとトレーニングエリアが森林へと変貌する。

「森?」

「ここでランニングですか?」

キャロとスバルがあたりをきょろきょろと見回す。

「そうだ、不安定な足場でのランニングはバランス感覚や効率のいい体の動かし方を覚えるのにも良いからな」

「なるほど〜」

「まぁ既にある程度運動しているしな、体を温める程度で3週くらいしてみようか」

「3週!?」

「あ、あの、高町陸将どの?」

「恭也でかまわんぞランスター、堅苦しいのは好かんのでな」

「えっと、じゃあ私の事もティアナでいいです」

「む、心得た」

「あ、じゃあ私もスバルって呼んでください!
 キャロとエリオも名前の方がいいよね?」

「そうですね」

「はい」

ティアナに続き3人も名前で呼んでもらうように会話に加わる。
ひとしきり呼び方などを話し合ったあと気を取り直してティアナが発言する。

「あの、それで恭也さん。3週ってこの木々の生い茂る不安定なエリアを3週ですか?」

「ああ、他にそれらしい場所は無いと思うが?」

「このトレーニングエリアの外周って1kmちょっとあるんですけど」

「ああ、5週といきたいところだがなのはの訓練を少しやった後だしな、
 無理なく3km強といったところだ」

「あの〜、それってマラソンって言いませんか?」

恐る恐る手を上げて発言するスバルだったが、

「マラソンをやらせるつもりなら最低でも20週はしてもらわんとなぁ」

恭也の無常な一言で再び4人は固まった。

「それともマラソンの方がよかったか?」

軽く聞いてくる恭也に4人そろってブンブンと首を振る。

「まぁ俺も付き合うから無理せん程度に軽くな」

「え?恭也さんも一緒に走るんですか?」

「ああ、俺も自分の鍛錬があるからな。
 ついでに出来るならそれに越した事は無い」

「はぁ……」

「それじゃ始めるぞ!」

「「「「はい!」」」」

こうして最初のメニュー『3km強の軽い(?)ランニング』を消化していく。


「はぁ〜……つかれたぁ……」

大きく息をついて体を休めるスバル。

「はぁ……はぁ……」

「はぁ……ふぅ……」

バックスであるティアナとまだ子供のエリオは座り込んでしまっている。

「………………」

キャロはもう声を出す気力も無いらしい。
そして恭也はというと……

「お前たち案外体力無いなぁ。バックスのティアナとサポートのキャロはともかく、
 スバルとエリオはクロスレンジが主体なんだからもっと体力無いとこの先大変だぞ?」

息切れ一つしていなかった。

「恭也さんは、凄いですねぇ」

「ん?ああ、お前たちに合わせてゆっくり走ったからな」

「あれでゆっくり!?」

「す、凄すぎる……」

「まぁ伊達に陸戦SSSランクを持っちゃいないって事だ」

「はぁ〜……」

関心しきりの3人にいまだ魂抜けっぱなしのキャロ。

「さて、あと休憩3分で……」

「はうっ!?」

いきなり覚醒したキャロが涙目で恭也を見つめる。

「……6分にしとくか」

「きゅぅ〜……」

6分でもキツいが休憩が伸びて安心したのか再び沈没するキャロであった。

その後休憩を挟みつつ常識の3倍程度の基礎トレーニングを続けていく。
肉体的、魔力的に基礎能力を向上させる訓練でなのはにもやられされていたが、
その内容の濃さは比べ物にならないレベルだった。

「よし、そこまで!10分ほど休憩しようか」

「ぜぇ……ぜぇ……」

ここまでくるとスバルでさえグロッキー状態、

「………………」

「………………」

「………………」

すでに残り3人は生ける屍と化している。

「ふむ……明日からはもう少しメニューを減らした方がよさそうだな」

「な、なんで恭也さんは……そんなに、平気そう、なんですか?」

「ウチじゃこれくらいが基礎トレのメニューだからな、
 この後にやっと本格的な訓練に入るんだ、この程度でバテてたらやっていけん」

「ひえぇ〜……」

驚きと疲労で倒れこむスバル。

「休憩終わったらスターズとライトニングスで軽く模擬線やって今日は終わりにしよう。
 体を壊したら意味が無いしな」

「よ、よかったぁ……」

安寧の表情を浮かべる面々。
しかし疲労からか忘れていた、恭也の『軽く』は決して『軽く』無いことを……


しばし時間を遡ってヴァイスの操縦するヘリの中。

「しかし陸戦特務武装連隊の隊長さんが訓練してくれるとは凄いですねぇ」

「いまごろ4人とも地獄も見てるかも」

「まっさかぁ、なのはさんからも申し送りしたんでしょ?なら4人に合わせて……」

「私は『いつもどおり普通におねがい』って言っただけだよ?」

「…………」

ヘリに沈黙が流れる。

「普通にって……陸戦特務武装連隊の普通ですか?」

「うん」

「……鬼っすね、なのはさん」

「あの訓練に慣れれば私の訓練なんか軽くこなせるようになるよ」

「それまでもちゃいいですが……」

「おにいちゃんの訓練ってものすごくキツいけど不思議と体壊さないんだよねぇ。
 だから大丈夫!」

極上の笑顔でサムアップするなのはであった。


その後3時間に及ぶ模擬戦によって4人になった生ける屍たちは早々に眠りについたそうな。

「あ、明日もまたコレなの……?」

「お姉ちゃん、あたし、死ぬかもしんない……」






A☆TO☆GA☆KI

というわけでIF、StrikerS編その1です。
恭也による地獄の訓練がスタートしました。スバルたちは生き延びることが出来るのでしょうか?
『陸戦特務武装連隊』ですが完全にオリジナルです、妄想です。
恭也はなのはより上の立場にしたかったもんで。

随分と書き上げるのが遅くなってしまって申し訳ない。
それもこれもOGsが面白いのが、キョウスケとアルトがかっこええのがいけないんやぁぁぁぁ!
SS書く合間にプレイするつもりがプレイする合間にSS書くなんて事に……
次もこんな調子になりかねないですが見捨てないでNE?



新部署が設立されてますな〜。
美姫 「というのも、忍の技術力が格段にパワーアップしたからよね」
まさか、ガディンを解析して量産するまでになるとは。
美姫 「まあ、管理局のバックアップもあったからこそでしょうけれど」
にしても、凄いな。
美姫 「凄いと言えば、恭也の特訓も」
やはり、相変わらずということかな。
美姫 「StS編となるIFシリーズ。これからどうなっていくのかしらね」
また次回もお待ちしてます。



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