エルシオール離反から一週間―――――

 

 

「はいはい! 朝ごはんです! 起きなさ〜いっ!」

「う〜……あと、五分」

「ね、眠いよ。お姉ちゃん」

 

 宇宙を進む高速宇宙艇の中では一般家庭ではごくありふれた光景が展開されていた。なんというか、こう……当人達の意思とは別に。

 寝室(兼ユウ&ユキ自室)のベッドにシーツを団子にしながら、今もなお惰眠をむさぼる三人にアンスが大声を張り上げた。

 

「五分って言って半日寝るのは誰かしら? さあ、さっさと起きてご飯を食べる!」

「う〜」

「む〜」

 

 エルシオールでの一件から、アンスはアヴァンたちと行動を共にしていた。アヴァンは最初、アンスを客人として迎え入れようとしたのだが、艦の中(エルシオールよりも遥かに狭い)があまりに――――――凄絶なまでに散らかっていた為、断念。

 洗濯物は溜め放題。

 台所の洗い物も溜め放題。

 掃除は年に一回すれば良い方。

そんな状況を目の当たりにした彼女が衣食住に関わるおよそ全てを担うと言い出すまで五分と掛からなかった。

 

 今は時間的には朝。

 規則正しい朝食を摂るべく、アンスは六時に起床して準備に取り掛かった。しかしいつまでも起きてこない住人達に業を煮やして、ついにフライパンをお玉で叩きながらベッドで川の字で寝転がるユウとユキ、そしてアヴァンを怒鳴り散らす。

 

「アヴァン! 保護者である貴方が模範にならなくてどうしますか!」

「アンス……頼む、静かにしてくれ。眠れない」

「起きろって言ってんだろうが、このクソボケがぁぁぁぁっ!」

 

ガスッ、ガスッ、ガスッ! ガイィィィィンッ!

 

 訂正、アヴァンを殴りつける。これが今の彼らの朝だった。

 

 

銀河天使大戦 The Another

〜破壊と絶望の調停者〜

 

第三章

番外編 穏やかなる日々は疾く往き去りし

 

 

☆朝食☆

 

「………」

「……おねえちゃん?」

「……これ、なに?」

 

 アヴァンたちの前に出された白磁の皿には黒い布切れのような物体が数枚と、円盤状の黒い物体が一つ乗せられていた。テーブルの中央には四角い黒い物体が置かれている。

 

「何って、ご飯ですよ」

 

 うむ。見事なまでに炭化しているベーコン&エッグにトーストを、どうやったら胸を張って『朝食』と断言できるのか。アヴァンは目の前が少し暗くなった。

 ともかく食事である。見かけはアレでも味は何とかなるかもしれない。アヴァンはそう願った。そんな弱気な姿勢はまったく彼らしくない。

 

「ガリガリガリガリ……」

「ゴリゴリゴリゴリ……」

「ベリベリベリベリ……」

「サクッ、ウマウマ、ゴクン」

 

 とりあえず、一人だけ食事のサウンドエフェクトが明らかに異なるのだが?

 食べているものは四人同じ炭化ベーコン(以下略)なのだが、アンスだけは普通にベーコンを、タマゴを、トーストを食べている音なのだ。対してアヴァンたちは普通に完全固形物を噛み砕く感じである。

 

「「「はぁ……」」」

 

 きっと生活環境が原因なのだろう。

 三人はそう思い込むことにした。

 

 

☆午前(洗濯編)☆

 

「はぁ……なんですか、これは?」

「えーと、そのぉ―――――故障中、です」

 

 溜りに溜まった洗濯物を片付けてしまおうと篭一杯の衣服を抱えて艦のランドリーまで来たアンスとユウだったのだが、洗濯機はもとより乾燥機も故障中だった。

 

「アヴァンは直さなかったんですか? 彼、一応技術者でしょう」

「アウって基本的に怠け者だからさぁ、全然やらないんだよ」

 

 洗濯物の片付けは洗濯機の修理から始まった。

 

 

    午前(掃除編)☆

 

ガオー、ガオー、ガオー……

 

「別に片付けなくてもいいだろうに……そう思わないか?」

「清潔は、大事」

 

ガオー、ガオー、ガオー……

 

 怠け癖のアヴァンが同意を求めると、ユキはあっさりと否定した。ハンディクリーナー(手持ち式掃除機)のモーター音が虚しく響く。

 

「それよりユキ、今日の昼飯どうするよ」

「ぅ……それは、アウが決めて」

 

 明らかな嫌悪の表情を浮かべるも、ユキはあくまで平静を装った。とはいえ朝の黒炭フルコースだけは勘弁して欲しい、というのがユウも含めた三人の総意である。

 

「仕方ない。俺が作る」

「それはそれで、イヤ」

「……メロンは使わないぞ」

「なら、いい」

 

 アヴァンが好き勝手に食事を作ると、それはそれでメロンのフルコースしか出てこないのである。一応他の料理も作れるのだが、そこは情熱の傾け方の問題なわけで。

 世界の誰からも理解されない非業の料理人・アヴァンであった。

 

 

 

 

☆昼食☆

 

「どうよ、俺の力作だぞ!」

 

 胸を張るアヴァン、しかし他の三人は完全に呆然としていた。

 テーブルに並べられた料理はカレーである。某カリー通のエクセキューターも『なんですか、これは!?』と言わんばかりの甘口カレーが食欲をそそるスパイシー(でも甘い)な香りを漂わせていた。

 

「信じられません。アヴァンにこれほど普通の料理が作れるなどと」

「お姉ちゃん。これからしばらくメロン以外の料理は食べれないかもね」

「うん……次は十年後かな。まともな料理が出るのは」

 

 それだけアヴァンはメロン料理を作り続けているらしい。それだけのメロンをどこから仕入れているのか、ユウもユキも分からないという。半月に一回の物資補給の際も、通常の発注とは別口でメロンだけ届くのだそうだ。

 

「ああ、旨い! やはりカレーはメロンカレーに限る!」

「「「これもメロンなの!?」」」

 

 まったくこの男の考えることは分からない……

 ちなみに、メロンカレーのレシピはエンジェル隊一の腕前を誇るアイツから頂いたものだったりする。

 

 

 

☆午後☆

 

 ハンガーに立つアンスの眼前では、三機の人型が静かに次の戦闘を待っていた。およそトランスバールには存在しないであろう技術で製造されたこれらの兵器は、アンスに戦慄と同時にある種の美しささえ感じさせるのだ。

 

 RCS・ブルー。

 RCS・レッド。

 

 後に聞かされた量産計画(開発・運用のためのプロジェクトチームも存在するらしい)の雛形とも言うべきこの二機は、強大な力を持つ兵器でありながら決して殺戮の禍々しさを感じさせない。手にした力に酔いしれることのない、純粋な意思を持つユウとユキが搭乗者だからかもしれないが。

 またEMX02コスモにはかつての騎士道精神のような潔さがある。ただ真正面から敵に立ち向かい、正々堂々とこれを撃破する。しかし全てを可能とする機体性能と、それを完璧に使いこなす技量と敗北を恐れぬ勇気を併せ持ったパイロットがあればこそ、の話だ。

 

「ここには居るから、困ったものだわ」

「何が困ったのかな?」

 

 振り返ればアヴァンがそこに立っていた。狭いキャットウォークの上で特に目も合わせず、二人は並んで手すりに背中を預ける。

 

「いずれ私を置いて行くだろう、大馬鹿野郎に困っているんです」

「………なら、俺のことじゃないな。俺は何処にも行かない」

「っ、そうやって―――――」

「置いて行けるわけ無いだろ。アンスは寂しがり屋だからな」

 

 そう言ってケラケラ笑うアヴァンが無性に腹立たしくて、でも愛おしくて、

 

「ふんっ!」

「ごふぁっ!?」

 

 気付けばボディブローをかましているアンスだった。アヴァンも照れ隠しだと分かっているのか、特に何も言わない。

 

「誰も寂しいことはないわよ! ええ、貴方なんか宇宙の彼方まで行けばいいじゃない!」

 

 だからそんな強がりを聞くまでも無く、アヴァンはそっと肩を抱き寄せた。

 

「じゃあ宇宙の彼方まで行く時は、アンスにもついて来てもらおうかな」

「嫌がっても、一緒に行くから……」

「さっきと言っている事が違うじゃないか」

「細かいことは気にしないでよ」

「そうだな……」

 

 抱き寄せた肩をさらに強く引いて、アンスを自分の方へ向かせると一瞬のうちに唇を奪っていた。ただ重ね合わせるだけの、軽いキス。

 

「大雑把なのもイヤ」

「我侭だな」

「貴方なら、いいわよ」

「そうか」

 

 離れた唇をもう一度重ねようと、二人の顔が近づいていく。だが二人を引き離そうとする影が二つ、忍び寄って―――――

 

「ずるいっ!」

「ず〜る〜い〜……」

 

 もとい、突撃してきた。

 

「私もお姉ちゃんとチュ〜するの〜!」

「私も、する……」

「あ、ちょ、こら、待てって!」

 

 あれよあれよと言う間にアヴァンの腕からアンスは奪い去られ、

 

「チュ〜」

「チュ〜」

 

 左右から幼く瑞々しい二人の唇が……

 

「あの、二人とも……ぅぅ、嬉しいような、恥ずかしいような……」

「NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」

 

 

 

 

「あ、ああ、あ……」

 

 何やら激しくショックを受けた様子のアヴァン。アンスがユウとユキから頬にキスされたぐらいで、一体何が問題だというのか。

 

「アンスが、アンスが……」

 

 アンスが?

 

「アンスが、百合キャラになっちまったぁぁぁぁぁぁブラげっ!?」

「誰が百合キャラですか、誰が!」

 

 アンスの正拳突き(右)をボディに受けて、アヴァンはド派手なモーションで吹っ飛んでいく。そして、その先にあるものが厄介だった。

 整備が完了し、ハンガーに固定されていたコスモである。

 

「あ」(チュ〜に夢中だがついに我に返ったユキ)

「チュ〜」(チュ〜に夢中でまったく気がついていないユウ)

「しまっ……」(ツンデレ的条件反射で殴ったことに気付いて後悔するアンス)

「びぎゃっ!」(コスモに激突死するアヴァン)

 

 コスモの左腕を覆う紫紺の装甲に鮮血が飛び散り、

 

 ズルズル……ドシャッ!

 

 ハンガーに床に叩きつけられたアヴァンの口からは、白いモヤのようなものが吐き出されている。これはもう、明らかに、言うまでもなく、

 

「死んじゃった」

「あ、もう終わったの?」

「ちょ、え? いやそれはマズイでしょ!?」

 

 銀河天使大戦……完!

 

 

 

 

 ウソです。

 

 

    治療☆

 

ハンガーから自室へ運び込まれたアヴァンは、医龍もかくやの緊急治療を受けることとなった。実際は軟膏塗って包帯を巻くだけなのだが、なぜかユウとユキは白衣とワイシャツ(サイズは当然あっていない)を身に纏い、怪しげな注射や錠剤を無理矢理アヴァンに施そうと襲い掛かってくるのだ。

 ちなみに、二人のワイシャツから下は何も装着されておりません。

 

「ぐ〜るぐ〜る、ぐ〜るぐ〜る、ぐ〜るぐ〜る……」

「おい、ユウ。包帯巻きすぎだ」

「注射……注射……」

「ユキ! モルヒネを静脈注射するんじゃないっ!」

 

 マズイ。このままではミイラ男にされた挙句、薬物の静脈注射で昏倒させられてしまう。アヴァンは最後の頼みの綱であるアンスに救いを求める視線を送った。

 それを受けた彼女は、自信もたっぷりに頷くと二人を制止した。

 

「二人とも、これではいけません」

「え〜」

「そんなこと、ない」

「彼は内臓を痛めています。緊急オペが必要です!」

「了解!」

「すぐ、準備する」

 

 部屋の中がさらに慌しくなる。どこからか心電図やらメスやらガン細胞を死滅させるレーザーカッターやらが運び込まれ、必死の抵抗むなしくアヴァンは手術台に固定されてしまった。

 

「ちょ、オイコラ! 待て、俺に手術は必よ……モガモガっ!」

 

 猿轡を噛まされ、ついにチェックメイトである。しかもアヴァンの四肢を拘束している金具は、コスモやギャラクシーに使われている軍事用合金製だ。普通に暴れたぐらいではびくともしない。

 ちなみに、アヴァンがリフレジェント・クリスタルの力ですでに怪我は完治していたりするのだが……気にしてはいけない。

 

「ではこれより、左心室縫合手術を開始します」(適当)

「開始しま〜す!」

「麻酔、完了」

「メス!」

「はい!」

「患者、呼吸脈拍異常なし」

 

 見る見るうちにメスがアヴァンの体を切り裂き、

 

「フゴゴッ、フガゴォォォァァッ!」(やめろ、ダークゥゥゥゥッ)

 

 盟友からよく聞かされる名台詞の一つが艦内に木霊した。

 

 

 

    夕食☆

 

「はい、できたよ〜」

「コーンポタージュと黒糖パン……大好き」

 

 赤と白のチェックが映えるテーブルクロスに広げられたのは、質素な木の器に盛られたスープとパンだった。貧乏くさいところはあるが、まあ、メロンカレーや炭化したトースト類に比べればまともな食事だといえよう。

 

「体に染み入りますね……」

 

 ポタージュを飲みながらアンスがほう、と息をつく。インスタント製品とはいえ、一日の疲れを癒してくれることに変わりは無い。このほのかな温かさと甘さが緊張をほぐしてくれるのだ。

 

「それに引き換え―――――はぁ」

 

 彼女の膝元には改造手術のドタバタ騒ぎで疲れ果てたアヴァンが、悠々と膝枕で寝息を立てていた。まあ、腹をかっさばかれたりすれば仕方ないだろう。

 

「あとで落書きしよ〜っと」

「額に『肉』は、必須だね」

 

 すでに手元に黒マジックを用意している二人をアンスは微笑ましく見つめる。RCSという殺戮兵器を操縦する彼女達も、歳相応の表情を見せることが訳もなく嬉しかった。

 

「でも、お姉ちゃんは後悔してないの?」

「え?」

 

 突然ユウに問いかけられてアンスは固まった。

 

「アウについて来たら、きっと……」

「後悔なら今日一日で何度もしました」

「?」

「部屋の掃除は殆ど出来ていない。洗濯機も壊れたら壊れっぱなし。食事は偏りすぎてまったくバランスが取れていないし」

 

 少なくとも、食事の件はアンスも強くは言えないはずなのだが……彼女はやれやれ、とばかりに溜息をついた。

 

「こういう劣悪な生活環境が待っているとは思いも拠りませんでしたよ」

「お姉ちゃん、そうじゃなくて……」

 

 この戦いにどのような決着が待っていようと、アヴァンの戦いは終わらない。リフレジェント・クリスタル・オリジナルによって永久の時を生きる彼は、これからもずっと戦い続ける。アヴァンと行動を共にする、ということはその戦いに否応無く巻き込まれていくことだ。

 十年、二十年ではない。何千万、何億という年月を戦い抜かなければならない。人の寿命では決して追いかけることも出来ない世界なのに……

 

「もし……」

「もし?」

「もし、あの時アヴァンと別れていたら私は……それこそきっと後悔していたから。もう、離れたくないのよ」

「お姉、ちゃん……」

「あ、もちろんユウもユキも一緒じゃなきゃイヤなのよ?」

 

 次の瞬間、アンスは再び両サイドから抱きつかれて、座っていた椅子ごと押し倒されていた。ついでに何か、床に転がり落ちたような音も聞こえたが気にしないで置く。

 

「お姉ちゃん、大好き〜!」

「好き〜」

「やん、ちょっと二人とも……くすぐったいったら」

 

 一生懸命頬を摺り寄せてくるユウとユキとじゃれあうアンス。一方、バタバタと暴れまわる少女達の足は、的確にあの男の頭部をヒットしていた。

 

「いだっ! がっ! て、手前ら後で絶対啼かせてやるからばぎょっ!?」

 

 

    入浴☆

 

※WARNING※

 入浴シーン。

それは多くの作家達があらん限りの気合と浪漫を込めて

描き挙げる至高の世界である。

しかし一方で、一部の読者に不快感をもたらしてしまうことも事実。

 ともかくここがこの番外編のヤマ場であることは確かなのだ。

なので、本編の重苦しい空気など微塵も関わり無し、

とばかりにぶっ飛ばさせていただく。

というのも先のハンガーにおけるラブコメなど足元に及ばぬ

重要性を秘めているからだ(と筆者は勝手に判断している)。

ただ管理人様の意向によって削除・変更されてしまう

可能性を多分に含むシーンでもあるので、ご理解いただきたい。

 

では、魅惑(?)の世界へ……

 

 

 この高速艇は生活スペース可能な限り省いているのだが、どういうわけかバスルームだけはやたらめったら広かった。軽く四、五人は入れる浴槽に湯を注ぐのは欧風の獅子の彫像だ。シャワーは本来のクルーの数に合わせて三台取り付けられている。

 ともかく、まずはアンスである。

 

「ほぉ……」

 

 湯船に肩までどっぷり浸かり、アンスは一日の疲れを思う様吐き出していた。湯に塗れた白磁の肌は艶やかに光り、同時に熱にやや赤みを帯びている。そこにブロンドの髪が絡み合うように張り付き、一つのアートを創り上げているのだ。さらに湯船の淵に載せた美脚を悩ましげに組み、天を仰ぐことで露になるうなじには恋人との契りの跡が見え隠れしている。

 本編ではあまり触れられていないが彼女はかなりの巨乳である。バストは軽くGはある。その豊かな双丘が水面に『ぷりゅりゅんっ☆』と浮かぶ様は男のリビドーにぐっ、とくるものがある。また形も整っており、見事な楕円を描いていて、これだけで一つのアートとも呼んでも遜色はない。しかし真正面から対峙したならば、その圧倒的とも言える聖なるオーラによって老若男女問わず、思わず一歩後ずさることだろう。ちなみに夜のアヴァンに苛められる確率ダントツNO.1の部位だったりする。

 しかし他が劣っているわけではない。ウェストは鍛えられた筋肉によって引き締まり余分な肉は一切無い。しかし触れれば吸い付くような瑞々しさと指先を拒むいじらしい弾力が、男の邪な欲望を引き立てる。

 そしてこれまたウェストと対照的なのがヒィィィップゥッ!(勇者風に誇張)である。アンスのそれはまさに『白桃』と呼ぶに相応しい。湯船の外においてあった洗面器を取ろうと体を乗り出せば、持ち上がった美尻はたっぷりとした質感で雄の目を惹き付けて離さない。

 

 

(ブロウゥクゥンッッッ、ファンットォォォォォムッ)

 

 

 次、ユウ。

 

 彼女の外見年齢は12〜14ぐらいだろう。それに見合った体型の持ち主なのだが如何せんバランスがいい。普段のボーイッシュな言動とラフな服装故に目立たないがバストはなんと『B』もある。その小ぶりながらも存在感を主張する膨らみは、その筋の人間を犯罪へと駆り立ててしまう。しかもそんな彼女は恥ずかしげもなく大開脚しながら体を洗っているものだからなお性質が悪い。

 子供らしいふくよかさを残したお腹に控えめなおへそ、と続いて視線を下に向ければなだらかな丘が待っている。無駄なものは産毛すら一切無い清浄たる世界は今日もあの男の物だと思うと、やおら腹立たしさを覚えてしまう。

 何より子供だけが持つ瑞々しい肌はボディソープの泡を洗い流すことでいっそう美しく輝いて見える。さらにユキが指でなぞると『やだ、くすぐったいってば☆』などと無邪気に返すのだ。そして一切の穢れを知らぬであろうその屈託の無い笑顔も、やはりあの男の物なのだ。そろそろ主役を降板させてやろうか……(怒)

 

 

(ゴォォォォォォォルディオオオオオンッッ、クラッッッシャァァァァァァッ)

 

 

 一方のユキはユウと体を『洗い合いっこ』していたが、自分が終わるとさっさと湯船に戻っていった。しかし濡れて滑りやすくなったタイルを普段からは信じられないような、おっかなびっくりな物腰で歩く度に白く小さなお尻が『ぷりっぷりんっ☆』と揺れるのだ。これだけで鼻血が致死量に到達しかねない。

 湯船の淵に腰を下ろしてからも危険の連続だ。ユウと違って恥じらいというものを知っているだけあって、体を隠すようにハンドタオルを下げているのだが、ハンドタオルなのではっきり言って隠すにはサイズが足りていない。ちらり、ちらりと見え隠れする桃色の突起やへそ、そして逆三角の絶対聖域が横目に見ているアンスでさえオドオドさせてしまう。

 

 しかも胸はほとんど『ぺったんこ』。そう、『ぺったんこ』なのであるっ!!!(やけに強調)。

ゆきっぷうは決してロ○コンではないが(ゆきっぷうの盟友はロリ○ンだが)、それでもこの『ぺったんこ』は危険な存在だと認識している。そこにあるわけではないのに、手を伸ばせば確かに存在する幻の……(中略)……であると同時に、存在感の無さが一種の愛おしささえ醸し出す。しかし忘れてはいけないのは……(中略)……なのである! 

こういう要素を兼ね備えたキャラクターは世に多く存在するが、それは全て人類の奇跡なのだ、宝なのだ、勇気なのだっっっ!!!(意味不明)

 しかしそんなプレシャス・ワンダーランドの一つであるユキも結局はアヴァン一人の所有物でしかない。なぜゆきっぷうはそんな風に世界を作ってしまったのだ!?(号泣)

 

以上、BGM『勇者王ガオガイガー究極神話ヴァージョン』

 

 

 

 ともかく、三人は平和に入浴を楽しんでいた。

 そこへ唐突にバスルームの折りたたみ式のドアが開いた。颯爽と現れたのは腰に手拭を巻いた、諸悪の根源であるアヴァン・ルースだ。

 

「おー、もうやってるのかぁ」

「アウ、遅いよ! 早く髪の手入れしてよね〜」

「湯あたり、五秒前」

 

 などとやり取りを交わしながらアヴァンは淀みない仕草でシャワー前の椅子の一つに陣取り、普通にユウの頭を洗い始めたではないか!?

 その光景を目の当たりにし、仁王立ちになって肩を震わすアンス。

 

「アヴァン、貴方は一体何をしているのですか?」

「ん? ああ、二人の髪は痛みやすいからな。俺がちゃんとトリートメントしてやらんといかんのだ。いつもの日課だよ」

「日課って……アヴァァァァァンッ! この子達と一緒にお風呂入ってたんかぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 一応彼は二人の夫であり主人である。妻と入浴を共にするのは別段可笑しいことではない。しかしアンスは物凄い勢いで跳躍するや否や、アヴァンの背後に回りこんでヘッドロックをかけると、あっという間に彼の顔色が自分の髪と同じぐらい蒼くなった。

 

「ぐぅ……なぜ、だ? ア、ンス……」

「黙れ、変態! ロリコン! キチガイ! 浮気者〜!」

 

 いや、浮気も何も……アヴァンがユウとユキをほったらかしてアンスに浮気したのだが……ともかく彼女の凶行を止めたのはユウとユキだった。

 

「まあまあ、落ち着いて」

「お姉ちゃんもヤキモチ焼きだよね〜、うんうん」

 

 ヤキモチかどうかはさておき、二人はとんでもないことを言い出した。

 

「お姉ちゃんもやってもらったらいいじゃん!」

「グッド、アイデア」

 

 頷くユウとユキ。硬直するアンス。そしてニヤリ、とほくそ笑むアヴァン。

 行動はすぐに開始された。ユウとユキが素早くアンスの動きを拘束し、椅子に腰掛けるアヴァンの前に座らせる。アヴァンも愛用のトリートメントとエステ用オイルを手元に広げ、その選別に入った。

 

 

「ねえ、アヴァン」

 

 普段のように愛でるのではなく、本当に髪を慈しむ彼の指の感触に戸惑いを覚えながらアンスはぽつり、と呟いた。

 

「どうした、もしかして髪が引っかかったか?」

「いえ」

「じゃあ、オイルが肌にしみる?」

「それも大丈夫です」

 

 今アヴァンが使っているのは自分も愛用している、複数のハーブから抽出したエキスをブレンドしたオリジナルだ。かつてあるスパリゾートでエスティシャンとして働いていた頃に培った知識と技術の恩恵によるもの、らしい。

 

「ただ……」

「ただ?」

「普段の貴方にあまりにも似合い過ぎている、と思っただけです」

 

 別に機動兵器に乗って戦争をしなくても、こういう生き方があるならいいだろう。もっと平和に、穏やかな生活を送ればいいのではないか。アンスの思うところは、そういうものだった。

 無論、それが叶わぬ夢だから現実にアヴァンはこうして戦い続けているのだが。彼もアンスの意図を察しているのか、わざとらしく茶化すだけだ。

 

「しっかし、アンス。もう少し普段から髪の手入れぐらいしておけよ」

「えっ?」

「徹夜仕事が多いからってな。言えばこうやってさ、やってやるから」

「ん……そう?」

 

 オイルを髪に馴染ませ、揉み解す。それだけで連日のハードワークによって痛んだブロンドは息を吹き返すように滑らかさを増していった。

 

「強がるなよ」

「あ……んっ」

「お前の心ほど髪は強くないんだからな」

「覚えて…っふぅ……おくわ」

 

 不意につい、とアヴァンの両手が持ち上げられた。ご丁寧に手の甲を指でつねられ、あまりの痛みにアヴァンの目尻に涙が滲むほどだ。

 

「「ア〜ウ〜!?」」

 

 右手をつねるユウと、左手をつねるユキ。動きを封じられたアヴァンはただ苦笑いを浮かべるしかない。

 

「そういう悪戯はさ〜」

「ベッドで、やって」

 

 そしてアヴァンにもたれるように倒れこむアンス。途中からアヴァンの指がどこをマッサージしていたのか、それは秘密である。バレると掲載中止になってしまうから……(ヒントはアノ危険描写シーン!?)

 

 

    就寝☆

 

「はぁ、えらい目にあったわ……」

 

 結局あの後湯あたりしてバスルームから担ぎ出されてしまったアンスだったが、詫びるアヴァンを嬲り殺しにしたことでいくらか回復していた。

 ぼやくのもほどほどにして、床に布団を敷いて寝る準備を整える。ユウとユキの自室は二人部屋ということもあって、居住区でもっとも広い部屋だったりする。敷布団もアンスたち三人が並んで寝転がることのできるぐらいのサイズなので、特に今日は都合が良かった。

 そう、先ほどの悪戯に対する制裁という名目で、今夜のアヴァンはハンガーの天井に逆さに吊るされている。額には『肉』の文字もある。とても本編の主人公の一人とは思えない仕打ちだ。

 

「お姉ちゃん、準備終わった〜?」

「もう、ねむい……」

 

 艦のオートパイロットの設定などのチェックを終えたユウとユキが部屋に戻ってきた。二人ともよほど眠いのを我慢しているのか、瞼が半分閉じかかっている上に眉根を寄せているため、ものすごい悪い人相になっている。

 

「はいはい、じゃあ寝ましょ」

 

 川の字になって横になる三人。

 かくして今日はかろうじて平和に一日を終えるに至ったことを神に感謝しつつ、ゆっくりと眠りに落ちていく。

 

 願わくは、明日も何事もなく……

 

 ただ、ゆるやかなる平穏の日々を……

 

 

 まあ結局、自力で戒めを脱出したアヴァンが戻ってきて……

 

「うりゃー! 俺も寝かせろー!」

「げっ! アウ、どうやって戻ってきたの!?」

「あんな程度の拘束じゃ、俺の欲望を止めることはできないぜ!」

「縛りが、足りなかった……」

 

 チタン合金製のワイヤーでギタギタに縛り上げられ、その上でワイヤーを溶接され、さらにコスモの右脚に括りつけられていたというのに……つくづくこの男の行動力は計り知れない。

 

「今夜は三人まとめてフィーバーでぇいっ!」

「「「えっ、またぁっ!?」」」

 

 「え、また?」と聞き返すなよ……まるで普段からアヴァンが○○っているように聞こえてしまうじゃないか。

 

 

 

    おまけ☆

 

 

 翌朝、奴は事もあろうに旧式のカメラ(明治時代の骨董品)を持ち出してきた。『魂を抜きと……ゲフンゲフン、集合写真を撮ろうぜ!』などと怪しげな笑みを浮かべられてはアンスたちも断る術がなかった。

 正直、昨夜のフィーバー(トリプル)によって腰がヒィヒィ言っていたアンスたち三人だが、まあ気にしないでおくことにする。

 

「さあ、撮るぞ!」

 

 わざわざ新たに取り付けたタイマーのスイッチを入れて、アヴァンが自分の立ち位置へ駆け戻ってくる。そんな彼の両隣には、

 

「アウ、早く〜!」

「そこで、コケる……」

「コケちゃダメだって」

 

 ユウとユキが堂々と陣取っている。

 アヴァンが二人を抱え込むように腕を回し、



「なんで私だけ仲間はずれなのよぉ……」

 

 シャッター音の影に霞むアンスのつぶやきも他所に、アヴァンはどこか「してやったり」と満足気なのだった。

 

 やはり、宇宙は今日も平和だ……たぶん。



筆者たちの必死な解説コーナー(夢はむしろ諦めた方が……編)

 

ゆきっぷう「こんにちは、ゆきっぷうでございます。銀河天使大戦第三章番外編、お楽しみいただけましたでしょうか? ちょっと小休止、のつもりが何やら怪しい雲行きに……」

 

ミルフィー「エッチなのはいけないと思います!」

 

ゆきっぷう「お決まりの名台詞をありがとう……しかしっ! PAINWESTに集う先達の方々の勇気ある行動に自分も続かねばならぬ……不肖ゆきっぷうはそう決断いたしました!」

 

ミルフィー「え? 勇気なんて、ゆきっぷうさん持ってましたか?」

 

ゆきっぷう「なっ……失礼な! 俺とて作家の端くれ。禁断の領域に踏み出す勇気ぐらいは持ち合わせているさ!」

 

ミルフィー「でもでも、この人や―――――」

 

某金色の勇者「これがッ! 俺たちの勇気だァァァァァァッッッッ!!!」

 

ミルフィー「この人みたいに……」

 

某スーパーバーチャル・アイドル『みっくみくにしてやんよ〜♪』

 

ミルフィー「勇気ありますか?」

 

ゆきっぷう「スンマセン、私が間違ってました……っていうか二人目は人じゃないだろ!? ソフトウェアだろ!? ヴォー○ロイドじゃねえか!」

 

ミルフィー「え? でも、この間ゆきっぷうさんの部屋に居ましたよ?」

 

ゆきっぷう「ギクッ」

 

ミルフィー「普通にお茶飲んでましたよ」

 

ゆきっぷう「き、気の所為だよ……彼女は出番なんか待ってないんだよ。決して次回作に登場したりはしないんだよ」

 

 

 

 

ミルフィー「今回はなんか途中で変な画像が紛れ込んでましたよね。修正しなくていいんですか?」

 

ゆきっぷう「バカァァァァッ! あれは挿絵じゃ、さ・し・え!」

 

ミルフィー「そうなんですか? 私てっきりゴミか何かだと」

 

ゆきっぷう「お、鬼! 悪魔! 冷血漢!」

 

ミルフィー「そんなことないですよぅ。私、とっても優しいですよ?」

 

ゆきっぷう「悪意のない暴力が俺を襲う! ランファの苦労がよく分かるぜ……げふっ」

 

ミルフィー「それで、もうすぐクライマックスなのに挿絵なんか入れたんですか?」

 

ゆきっぷう「いや、それはね……やっと我が工房にスキャナー(EPONの2007冬新モデル)が届いたからなのさ! これでやっと各種画像を自分で用意できるというもの……!」

 

ミルフィー「今まではサークルの後輩を『画像を取り込まなければ、○○で××でキュインキュインにしてやる』って脅してたんですよね?」

 

ゆきっぷう「そんなことは決してありません!」(船場吉○の取締役っぽい)

 

ミルフィー「ともかく、これからの作品には必ず挿絵が入るんですよね〜。そんなにたくさんの絵、描けますか?」

 

ゆきっぷう「いや、必ず入るわけじゃないけど……まあ、盛り上がったりするシーンには力及ぶ限り入れていきたいなぁ、と」

 

ミルフィー「じゃあ、私のイラストもありますよね!?」

 

ゆきっぷう「無いアルヨ」

 

ミルフィー「え? 無いんですか? あるんですか?」

 

ゆきっぷう「いや、無いアルヨ」

 

ミルフィー「だからどっちなんですか〜!?」

 

 

 

 

ゆきっぷう「さてさて、時間も迫っておりますので今日はこの辺で。次回はちゃんと本編に戻ります。いよいよ最終決戦……けっして今回の番外編が製作の遅れている第五節完成までの時間かせぎとか、そんなことは絶対にありませんのでご安心ください!」

 

???「遅れているのはMUVLUVの方でありましょう」

 

ゆきっぷう「はっ!……お、お前……いや、あなた様はっ!?」

 

???「私とて急かすつもりは毛頭ございません。しかし今年中に公開、と宣言した手前、そろそろ何か成果を見せねばならぬのではないですか?」

 

ゆきっぷう「分かっております! 現在、三チーム交代制で突貫作業を続行しております故、もうしばしお待ちを……では皆様、ごきげんよう!」

 

???(どうですか姉上、奴は……)

 

???(なかなか一筋縄ではまいりませんね)

 

???(くっ……やはり奴には任せておけませぬ!)

 

???(案ずる事はありません。必ずや武様が事を成してくれるでしょう)

 

???(頼むぞ、タケル……!)





本編のシリアスは何処に!?
美姫 「それぐらい弾けてたわね、特にアヴァンが」
だな。因みに、WARNINGにああ書いてありましたが、一切削除してません!
これぞ勇気だ!
美姫 「いや、そんなに危ないシーンもなかったからでしょう」
いや、まあそうなんだがな。あれぐらいなら、大丈夫ですよ、……多分。
本編も気になるけれど、こういった番外編も楽しいな。
美姫 「そうよね。何でもないようで、あるような一日」
次は本編かな。そちらも待っています。
美姫 「待ってますね」



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